ネコだけど羊。

しゃみです。ピアノ演奏動画や楽譜の作成、また詩や曲の解説記事を書いています。

谷川俊太郎の「愛」と「あい」

谷川俊太郎の作品には「愛」と「あい」という異なる2篇の詩がある。

以下、備忘録。

「愛」

おまえが愛するとき 草も木もおまえの味方だ だがおまえが愛するとき 誰もおまえを助けない 何ものにも学ばずに 音楽に酔うこともなく おまえは愛することを覚える 肉ゆえに魂をおのがものにする 目に見えぬもの 成就することのないもの 決して到達できぬもののみに みちびかれて おまえが愛するとき いまはいま終わり いまがいま始まる 時は怖れと安らぎに満ちる つつましいここにいて おまえは無方へ旅する 幻のはての なつかしい故郷に魅せられて そこですべての名は溶けあい ひとつの名になる その名を呼ぶことでしか おまえはおまえを見いだせない

「あい」

あい くちで言うのはかんたんだ 愛 文字で書くのもむずかしくない あい 気持ちはだれでも知っている 愛 悲しいくらい好きになること あい いつでもそばにいたいこと 愛 いつまでも生きていてほしいと願うこと あい それは愛ということばじゃない 愛 それは気持ちだけでもない あい はるかな過去を忘れないこと 愛 見えない未来を信じること あい くりかえしくりかえし考えること 愛 いのちをかけて生きること