三味線の構えを学ぶときは、まず習う音楽、使う楽器、椅子か床かをそろえましょう。同じ「構え方」という題名でも、教材が想定する条件は違います。手の形だけをまねる前に、その見本が自分の練習に合うかを確かめることが大切です。
ここでは、構えの実演を選び、説明と写真を読み合わせる方法を紹介します。棹の角度や腕の力を一律に決めるのではなく、自分が見るべき場所と、まだ見本から分からないことを整理していきます。
音楽の名前と、楽器の種類を一緒に確認する
長唄、地唄、義太夫節、小唄、民謡、津軽三味線では、使う楽器や道具、演奏の仕方が異なります。細棹・中棹・太棹という分類だけでなく、教材のジャンル名まで見てください。津軽と義太夫節はどちらも太棹を使いますが、「太棹の構え」とだけ書かれていても、同じ見本を使えるとは限りません。
右手の説明では、撥を使うのかも確認します。小唄には撥を使わない爪弾きがあります。爪弾きを習う人が、津軽の撥の持ち方を出発点にした教材を見て、右手の形だけ合わせる必要はありません。見本の条件が違えば、手の形が違うこと自体は不自然ではないのです。
手元の楽器の種類が分からなければ、購入時の名称や説明書、以前に弾いていた音楽を控えます。借りた楽器なら貸し出し元の説明が手がかりになります。見た目だけで分類を決めず、分かる情報から教材の対象と照らし合わせましょう。
床に座る写真と、椅子の写真を混ぜない
写真は、手元の拡大だけでなく、座っている場所が分かる全景を見ます。上半身しか写っていない場合、床か椅子か、足元がどうなっているかは分かりません。全体の条件が確認できる別の写真や、説明文を探してから細部を見ていきましょう。
床に座っている姿も、すべて正座とは限りません。文楽の三味線の教材では、正座に見える構えでも足を開き、尻を着けて座ると説明されています。見た目の印象だけで「この人も正座だ」と補ってしまうと、本文の説明とは違う形をまねることになります。
教室の座り方も事前に確認できます。たとえば杵屋佐喜さんの長唄教室は、正座以外の環境も用意すると案内しています。自宅では椅子を使いたいなら、教室での座り方と一緒に伝えましょう。その教室の設備や対応は、別の教室にも共通する条件ではありません。
「胴を寄せる」は、どこをどうする説明か
構えの説明には「胴を寄せる」「腕を乗せる」などの言葉が出てきます。胴は箱状の部分、その上部で腕が触れる側の覆いが胴掛です。部位の名前を先に知っておくと、楽器全体を動かす説明なのか、腕が触れる一点を確かめる説明なのかを読み分けられます。
たとえば日本芸術文化振興会の細棹教材は、ひざゴムの上に胴を置き、胴掛の角に右腕を軽く乗せると説明しています。胴を少し傾ける一方で、裏皮が腹に付くと響きが妨げられることにも注意を促しています。胴の木の部分、胴掛、裏側の皮を、全部同じ「身体に付ける場所」として扱わないための具体例です。
東京藝術大学の津軽教材には、楽器を身体に寄せる説明があります。ただし、掲載された全体写真は床に座った例です。この一文から、椅子で構えたときの胴や腕の位置まで決めることはできません。細棹と津軽の説明を平均したり、どちらかだけを全楽器の決まりにしたりせず、対象と指している部分を確認します。
全景、接する場所、動きの順に見る
見本を見る順序を決めると、細部だけに気を取られずに済みます。まず全景で、座る場所と胴、棹がどのように並ぶかを見ます。次に、腿と胴、右腕と胴掛、左手と棹というように、接する場所へ視線を移します。最後に、手を動かす場面があれば、その前後で楽器の位置がどうなるかを見ます。
写真で分かるのは、写っている瞬間の配置です。触れているように見えても、押す力や支える重さは分かりません。輪郭を合わせるために強く握る、肘を引くなどの指示を、写真から自分で付け足さないようにしましょう。動きや力加減を知りたいときは、その箇所を説明した実演が必要です。
たとえば、腕の接写はあっても胴と腿が写っていなければ、右腕の見え方は確認できても、楽器全体の支え方は残ります。「写真は見たが分からない」で終えず、「腿に載る場所が見えない」と具体的にすると、次に必要な見本を選べます。
教わるときは、一つの場面を示す
初めから、構えと撥と左手の細かな動きを同時にそろえる必要はありません。のすけ会の初心者ガイドは、構え、撥の持ち方、発音、左手へと進む例を示しています。自分の教材でも、今の課題が楽器を持つ段階なのか、音を出す段階なのかを確認しましょう。
質問は「この写真の胴と腿が接する場所を、手元の楽器で示してほしい」「右腕を添える前と後で、どこを見るか」のように、一つの場面を挙げると具体的になります。使う楽器、椅子か床か、教材のページも一緒に伝えます。まだ教わっていない動作を試してから質問する必要はありません。
説明を受けた後は、直した場所と次回の確認点を短く残します。写真を撮る場合は先生の許可を得て、楽器と座る場所の全体が写る一枚に、必要な部分の写真を添える方法があります。記録は、教わった内容を思い出すために使いましょう。一枚の写真だけで、すべての動作を自己判定するためのものではありません。
楽器を安定して持てない状態では、そのまま形を保とうとせず、安全に置いてから説明を確認します。見本と同じ条件をそろえ、全体と部分を行き来して見ることが、次の実技を学ぶ準備になります。
参考資料
楽器と奏法の違い:日本芸術文化振興会 文楽 三味線の役割と種類、小唄の演奏。構えの具体例:同会 文楽 演奏の基本・細棹三味線、東京藝術大学 津軽三味線のかまえかた。
教室の案内と学ぶ順序の例:杵屋佐喜 長唄・三味線教室、のすけ会 初心者ガイド。教室の対応は申し込み前に確認してください。