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民謡と三味線|地域の歌と伴奏を知る

民謡(みんよう)は、人々が暮らしの中で歌い継いできた歌です。三味線はその伴奏に広く使われますが、すべての民謡に入るわけではありません。太鼓や笛と一緒に演奏する歌も、楽器を使わずに歌うものもあります。

民謡と三味線の関係を知るには、「どこの歌か」に加えて、「何のために歌われてきたか」「その演奏には誰が参加しているか」を見ると分かりやすくなります。ここでは津軽、おわら、郡上おどりなどの例から、歌と地域と伴奏の関係をたどります。全国の曲を一覧にする記事ではなく、一曲ずつ聴くための見方を紹介します。

民謡は暮らしの中の役割からも捉えられる

民謡には、仕事の動きを合わせたりつらさを紛らわせたりする仕事歌、婚礼などの祝い歌、盆踊りのような踊り歌があります。子供をあやす子守歌や、人々が集まって楽しむ歌もあります。同じ「民謡」という言葉の中に、違う目的の音楽が含まれています。

歌詞に出てくる景色や暮らしの言葉は、その歌を知る入口です。ただし、人の往来によって似た歌が別の地域へ伝わることもあります。曲名の土地だけを見て、ほかの地域と無関係に生まれたと決めることはできません。

現在は、地域の行事に加えて、民謡歌手の舞台や教室でも歌われます。暮らしの中で生まれた歌を、舞台で鑑賞することも、習い事として受け継ぐことも行われています。録音を選ぶときは、地域の行事の記録か、鑑賞用の演奏かを確かめると、その音楽の働きが見えやすくなります。

歌のリズムは一つではない

民謡の歌い方には、規則的な拍に基づく八木節(やぎぶし)様式と、規則的な拍に縛られない追分(おいわけ)様式という大きな捉え方があります。前者には、一人が歌い出して人々が続く音頭(おんど)の形などが見られます。後者では、一人が声を長く伸ばし、細かく音の高さを動かすコブシを用いることが多くあります。

この二つは、曲を速いか遅いかだけで分ける言葉ではありません。聴くときには、同じ長さの拍を感じながら言葉が進むか、声の一節が伸び縮みしながら進むかに注意を向けます。三味線がある演奏なら、歌の進み方に対してどこで音を入れているかも追えます。

日本芸術文化振興会の教材には、日本民謡協会が提供する「八木節」と「江差追分(えさしおいわけ)」の演奏資料があります。民謡の拍の感じ方を比べる入口です。三味線の音だけを探す前に、まず声がどのように進む音楽なのかを確かめてみましょう。

津軽民謡では歌付きの演奏と独奏を分けて聴く

青森県の津軽地方では、民謡の伴奏から、三味線だけで聴かせる独奏も発達しました。「津軽よされ節」などは、三味線の前奏に続いて歌が入る形と、前奏が独立した器楽の演奏の両方から聴けます。

歌のある演奏では、歌い出しと、一つの歌の句が終わる前後を続けて聴くと、三味線との関係を追いやすくなります。独奏では三味線の旋律の展開が中心になります。同じ曲名でも、どちらの形かを確かめてから聴くと、三味線の役割を取り違えずに済みます。

「津軽あいや節」の教材には、歌い手に応じて音階を弾き分け、奏者によってリズムのタメ方も変わることが説明されています。一つの曲にも、声と伴奏の組み合わせによる違いがあります。津軽民謡の例を、そのまま全国の民謡の弾き方へ広げることはできません。

おわらでは歌と三味線と胡弓と踊りを見る

富山市八尾(やつお)地域の「越中おわら節(えっちゅうおわらぶし)」では、歌に三味線、胡弓(こきゅう)、太鼓が加わります。胡弓は弓で弦をこする楽器です。三味線と胡弓が並ぶため、弦の音が聞こえたらすべて三味線だと思わず、映像で演奏する動きも見てみるとよいでしょう。

「おわら風の盆」の町流しでは、音楽に合わせて踊り手が町を踊り歩きます。この場の三味線は、歌やほかの楽器、踊りとともに演奏されています。三味線だけの技巧を追うほかに、歌が聞こえているときと楽器へ注意を向けるときとで、見る範囲を変えられます。

同じ富山県の民謡でも、すべてがおわらと同じ編成ではありません。五箇山(ごかやま)の麦屋節(むぎやぶし)には、楽器の演奏や踊りを伴わない「長麦屋節(ながむぎやぶし)」もあります。都道府県の名前が同じでも、曲と演奏の形は別々に確かめます。

郡上おどりは曲ごとの編成の違いも分かる

岐阜県の郡上おどり(ぐじょうおどり)では、歌と楽器だけでなく、踊り手が返す歌や囃子言葉(はやしことば)、下駄を踏み鳴らす音も関わります。文化財の解説には、太鼓、笛、三味線、拍子木による伴奏と、曲によって異なる踊りの速さや動きが記されています。

同じ郡上おどりでも、曲別の記録を見ると違いがあります。郡上踊保存会の録音「三百(さんびゃく)/げんげんばらばら」の公式案内では、「三百」に三味線二人、笛、太鼓、囃子の担当が記載されています。一方、「げんげんばらばら」の演奏者欄にあるのは太鼓と囃子で、三味線は記されていません。

この録音情報は、地域名やアルバム名だけでは、すべての曲の伴奏を同じと決められない例です。三味線の入る一曲を探したいなら、曲ごとの演奏者欄まで進むと、目的に合う演奏を選びやすくなります。

また、この作品は踊りに使いやすいよう、各曲を二回ずつ収録したと説明されています。録音の長さや曲の並びには、踊るためという用途も関わります。長い録音を見つけても、必ず一回の歌が長いとは限りません。

気になった一曲は地域と演奏者を一緒に記録する

曲を残すときは、曲名に加えて、地域名、歌い手や保存会の名前、伴奏楽器を控えると後で探しやすくなります。公演や録音の年月も分かれば、そのときの演奏として確認できます。同じ題名の別の演奏を、前に聴いた録音と混同しにくくなります。

最初の一回は歌を中心に聴き、次に三味線が鳴るところを追ってみましょう。さらに笛や太鼓などへ注意を移すと、三味線がほかの音とどう組み合わされるかを考えられます。踊りの映像なら、音の区切りと体の動きを合わせて見られます。

三味線の入らない歌も、民謡を知るうえで役立ちます。声だけの演奏と伴奏のある演奏を行き来すれば、何が加わると歌の聞こえ方が変わるかに気づく機会になります。ただし、録音条件も異なるため、音量の差だけで楽器や奏者の特徴を決めないようにしましょう。

習ってみたい一曲が見つかったら、曲名だけでなく、どの歌い手や地域の形を学びたいかを先生に伝えます。津軽三味線の独奏を弾きたいのか、歌に合わせたいのか、踊りの音楽を受け持ちたいのかで、目指す演奏は変わります。民謡三味線という広い名前から一曲へ絞ると、次に確かめたいことが具体的になります。

参考資料

民謡の役割と歌い方 日本芸術文化振興会 民謡。津軽民謡と三味線の関係は洗足学園音楽大学 津軽三味線。

富山の例 富山市 越中八尾おわら風の盆、富山県観光公式サイト おわら こきりこ むぎや。胡弓の楽器分類は日本三曲協会 三曲とは。

郡上の例 文化庁 郡上踊、日本伝統文化振興財団 郡上おどり 三百 げんげんばらばら。後者は録音作品の情報であり、無料の音源公開を示すリンクではありません。