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常磐津・清元・新内の違い|語り物を聴き分ける手がかり

常磐津(ときわづ)、清元(きよもと)、新内(しんない)は、いずれも三味線と語りで物語を表す浄瑠璃(じょうるり)の仲間です。常磐津と清元は歌舞伎舞踊との関わりが深く、新内は座敷での演奏や、街を歩いて演奏する新内流しでも親しまれてきました。

聴き分けるときは、声の高さだけで判断せず、言葉の運び、三味線の役割、演奏の場を合わせて見ると分かりやすくなります。ここでは正式なジャンル名として「常磐津節」「清元節」「新内節」を使い、三つを同じ観点から比べます。

共通する浄瑠璃の流れとそれぞれの成立

三つの音楽は、豊後節(ぶんごぶし)につながる浄瑠璃です。ただし、同じ人物が同じ時期に三つへ分けたわけではありません。受け継いだ語りに工夫が加わり、異なる名前と曲のまとまりが育ちました。

常磐津節は、初代常磐津文字太夫(ときわづもじたゆう)が1747年に江戸で始めた浄瑠璃です。豊後節の演奏が禁止された後も江戸にとどまり、踊りに合う音楽として発展させました。語る部分と歌うような部分を組み合わせ、歌舞伎舞踊の音楽として定着していきます。

清元節は、富本節(とみもとぶし)から独立した初代清元延寿太夫(きよもとえんじゅだゆう)が、1814年に江戸で始めました。歌舞伎舞踊で、一人の役者がさまざまな役を踊り分ける変化物(へんげもの)が流行した時期と重なり、その音楽として発展しました。

新内節は、18世紀の江戸で、豊後節から派生した富士松節(ふじまつぶし)の流れから生まれました。鶴賀若狭掾(つるがわかさのじょう)と、その門弟の鶴賀新内の活動を経て、新内節という呼び名が広まります。成立の流れと、名前が定着する過程を一つの年にまとめずに捉えるとよいでしょう。

舞踊を伴う舞台と語りだけを聴く場

常磐津節と清元節は、歌舞伎や日本舞踊の舞台で出会いやすい音楽です。常磐津節では、語り手と三味線奏者が舞台に姿を見せる出語り(でがたり)が基本です。演奏を聴きながら、踊り手がどの言葉や音で動くかにも目を向けられます。

踊りのない演奏会でも、二つの音楽は演奏されます。たとえば常磐津の「三世相(さんぜそう)」は、歌舞伎の舞台と常磐津単独の両方で取り上げられます。清元にも、歌舞伎から離れて音楽として鑑賞する作品があります。踊り手が見えなくても、人物や情景を声と三味線からたどる聴き方が成り立ちます。

新内節も初めは歌舞伎で演奏されましたが、後に座敷浄瑠璃(ざしきじょうるり)として定着しました。座敷浄瑠璃は、人形を使わず、太夫(たゆう)の語りと三味線で物語を描く演奏です。恋や別れ、人情の細かな動きを語る作品が親しまれました。現在は舞台での鑑賞公演もあり、座敷だけで行われる音楽という意味ではありません。

新内流しは、二人一組で三味線を弾きながら街を歩く演奏の形です。演奏家の解説では、宣伝や修行を兼ね、声をかけられると座敷へ上がって演奏したとされています。流しの姿は新内を知る手がかりですが、座って語る一曲全体と、街を歩く演奏は分けて見ます。

人数よりも語りと三味線の担当を確かめる

常磐津節の基本編成には、太夫三人と三味線二人、または太夫四人と三味線三人があります。清元節は太夫三人と三味線二人を基本に、三味線が三人になる編成もあります。新内節は通常、太夫一人と三味線二人です。

邦楽の解説にある「二挺三枚」は、三味線二人と語り手三人という意味です。「挺(ちょう)」は三味線、「枚(まい)」は語り手や唄い手を数える語として使われます。数字の順を知っておくと、出演者の説明を読みやすくなります。

三つとも、三味線の一人が高い音域を担当する上調子(うわぢょうし)を弾く編成があります。三味線が二人いるからといって、いつも同じ旋律を重ねているとは限りません。語りを受け持つ人、主となる三味線、高い音域の三味線という役割から聴き始めると、人数が変わる公演にも対応できます。

ここに挙げた人数は、ジャンルを当てるための絶対条件ではありません。実際の公演は曲や上演の形によって編成が変わるため、最後は出演者欄とジャンルの表示を確かめます。

声の使い方と言葉の進み方を比べる

常磐津節では、自然な発声と、音の高さが明瞭な節回しが特徴として挙げられます。踊りに合う拍やテンポを保ちながら、物語の言葉を運びます。聴きどころには、音の高さを段階的に下げる「オトシ」という語り口もあります。言葉の区切りで声がどう収まるかに注意すると、旋律と語りのつながりを追えます。

清元節は、歌う要素の強い語り物です。高い声を使う発声や、伸びやかな節回しに特徴があります。三味線も語りの伸び縮みに合わせてテンポを変える傾向があり、声と楽器の呼吸のやり取りが聴く手がかりになります。

新内節では、地声と裏声を組み合わせ、幅のある音域を上下する語りが用いられます。節尻(ふしじり)と呼ばれる、旋律の終わり方を強調する声の技法もあります。長く伸びる声だけを待つのではなく、その声が一つの言葉や節をどう終えるかまで続けて聴いてみてください。

これらは音楽の傾向で、すべての曲の全場面を同じ印象にする決まりではありません。清元の実演教材「北州(ほくしゅう)」では、太夫自身が、三味線より低い音から重厚に始める冒頭を聴きどころとして挙げています。「清元なら初めからずっと高い声」と覚えると、このような表現を見落とします。

同じ中棹でも三味線の働きが異なる

三つのジャンルはいずれも、中棹(ちゅうざお)の三味線を用います。棹の太さが同じ分類でも、演奏の役割は同一ではありません。見た目だけで音楽の種類を決めるより、声との合わせ方まで見てみましょう。

常磐津節の三味線は、拍やテンポを大きく変えず、曲の内容に応じた音色の変化で表現します。武家の事件を扱う時代物(じだいもの)と、庶民の暮らしを扱う世話物(せわもの)では、求められる語りや音の表情も変わります。一定の進み方の中で、音の出方がどう変わるかに注意を向けられます。

清元節では、澄んだやわらかな音を基本に、語りを引き立てる演奏をします。語りの一節が伸びたとき、三味線もどのようについていくかを聴くと、一定の拍を刻むだけではない関係が分かります。

新内節では、上調子が特に活躍します。上調子の奏者は小撥(こばち)という小さな撥を使います。低い側の三味線と高い側の三味線を聴き分けることに加えて、映像では道具の違いも確かめられます。小撥は三つのジャンルすべてに共通する道具として覚えず、新内の上調子の特徴として捉えます。

公式の演奏例を一つずつ聴く

日本芸術文化振興会の三つの解説ページには、いずれも2016年10月の国立劇場「邦楽鑑賞会」の演奏資料があります。別々の演目なので、同じ旋律を弾いた楽器の音色比較ではありませんが、それぞれの語りと三味線の関係を知る入口になります。

常磐津節の「宗清(むねきよ)」では、掲載された出演者欄に太夫四人と三味線三人、そのうち一人に上調子の記載があります。まず語りと三味線の担当を見つけ、言葉が進む部分と節を聴かせる部分を追ってみましょう。

清元節の「三千歳(みちとせ)」では、語りの節回しと三味線の進み方へ注意を向けられます。さらに違う表情を知りたいときは、実演家が聴きどころを説明する「北州」の教材へ進めます。「北州」はご祝儀曲でもあり、物語のせりふを語る場面だけが清元ではないことも分かります。

新内節の「明烏夢泡雪(あけがらすゆめのあわゆき)」の「浦里雪責の段(うらざとゆきぜめのだん)」には、太夫一人、三味線二人の出演者が記されています。声の節尻と、上調子の三味線を交互に追うと、一度にすべてを理解しようとせずに聴けます。

初めの一回で三つを当てられるようになる必要はありません。ジャンル名を確かめたうえで一曲を聴き、気になった声の終わり方や三味線の役割を残しておくと、次の演奏との比較が具体的になります。

参考資料

成立と編成と音楽の特徴 日本芸術文化振興会 常磐津節・清元節・新内節。各ページに演奏資料と出演者の記載があります。

舞台と鑑賞の場 関西常磐津協会 常磐津について、新内仲三郎・新内多賀太夫 新内とは。

実演家による具体的な聴きどころ 日本芸術文化振興会 清元の実演と解説。