三味線の糸が続けて切れるときは、糸を替える前に、何の糸がどの場所で切れたかを残しましょう。同じ品物を何本使ったかだけでなく、上駒、駒、音緒、撥が当たる場所のどこかが分かると、点検したい箇所が具体的になります。
使い込んだ糸の消耗と、交換直後から同じ場所で起きる切断は、分けて考えます。「強く弾いたせい」「糸の質が悪い」と先に決めず、切れた位置、張った日、調弦、直前の動作をそろえることから始めます。
切れたらいったん手を止める
糸が切れたときは、演奏や調弦を止め、楽器を安定させます。残った糸を強く引っ張ったり、同じ高さまで張り直して再現したりしないようにしてください。スズキの説明書も、調弦中に糸が切れると顔や目を傷つけるおそれがあるため、顔を近づけすぎないよう注意しています。
弛んだ糸が見えても、途中で切れているのか、結び目や巻いた部分が外れたのかは別です。見える範囲で切れた端があるかを確かめます。判断できない場合は、そのままの写真を撮り、「切断か、抜けたのか分からない」と伝えます。
外れた糸を安全に拾える場合は、交換品の袋などと分けて保管し、何の糸かを書きます。取り付いたままの糸を記録のために無理に外す必要はありません。手元の端を結び直して、繰り返し張る試験にも使わないようにしましょう。
糸の品名を一 二 三ごとに残す
「絹の13番」のような記録だけでは、商品を特定できない場合があります。メーカー名、系列や商品名、絹・ナイロン・ポリエステルなどの素材、一・二・三の区分、袋の番号を一組で残します。袋の表裏を撮ると、表示を後から読み直せます。
丸三ハシモトの表記では、13-2と13-3は、どちらも13という数字を含んでいても、二の糸と三の糸を表します。同じ太さの糸を好きな位置へ使う意味ではありません。切れにくくしようとして番号だけを上げる前に、手元の楽器と用途に合う指定を確かめましょう。
最近メーカーや素材を替えたなら、前の袋の写真も役立ちます。丸三ハシモトの製品でも、楽器や用途によって多くの種類があります。「三味線用」と書かれていることだけで、自分の三本への適合が決まるわけではありません。
切れた位置は近くの部品と一緒に示す
位置を残すときは、細い切れ端だけを大きく撮るのではなく、近くの部品も写します。上駒は天神に近い糸の支え、駒は胴の皮の上に置く部品、音緒は胴の下側で糸を留める部分です。同じ「駒のところ」でも、上駒と駒では場所が違います。
写真には、糸がどの部品の近くで切れたかが分かる一枚と、切れ端や接触部分が見える一枚を用意します。切れて糸が動いた後なら、「元はこのあたり」と分かる範囲だけを説明します。長さが分からないのに、元の位置を推測で決める必要はありません。
店へ伝えるときは、「三の糸が、胴の上の駒に接するあたりで切れた」のように書くと明確です。位置が見つからなければ、全体写真と残った糸の写真でも構いません。場所を確定するために部品を外すことはしません。
接触する場所ごとに点検する対象が違う
亀屋邦楽器のFAQは、上駒、駒、音緒、撥で弾く場所のそれぞれで切れる場合を分けています。同じ糸を交換する話でも、上駒や駒との接触、糸を留める部分、撥先の状態と、見てもらいたい対象が変わります。
駒の近くで繰り返すなら、糸が乗る溝を含めて駒を見せます。上駒付近なら、天神側を含む写真を添えます。音緒付近なら結び方と音緒の状態、撥が当たるあたりなら、使っている撥と弾いていた状況を伝えます。これは点検先を整理する方法で、位置だけで原因を決める表ではありません。
欠けや鋭く見える部分があっても、ヤスリで丸めたり、刃物で溝を広げたりしないでください。修理者の説明に加工方法が出ていても、素材、寸法、傷の程度が違う楽器へ、そのまま移せるとは限りません。気になる箇所は、触る前の状態で見てもらいます。
張り替え中 調弦中 演奏中を分ける
いつ切れたかも記録します。糸を取り付ける途中か、目標音へ合わせる途中か、演奏を始めてからか。三萃園は、劣化だけでなく、駒との接触、調弦での引っ張りすぎ、爪などが関係する例を挙げています。
調弦中なら、合わせようとした音、直前に聞こえた音や表示、どの糸巻きを動かしたかを残します。調子の名前と基音は分け、オクターブが指定されている場合はそれも添えます。切れた後に同じ操作をもう一度試して、原因を確認する必要はありません。
演奏中なら、撥で弾いたときか、左手の動作中か、何の曲のどのあたりだったかを控えます。新しい撥へ替えた直後なら、その変更も伝えます。奏法を一つの原因に決めつけるためではなく、道具と動作を同じ場面で見てもらうための情報です。
寿命を日数だけで決めない
糸の交換時期は、素材、使う糸、演奏方法、練習量によって変わります。メーカーが化繊を切れにくさの面から候補に挙げることはありますが、「何日までは切れない」と保証する話ではありません。絹を使うジャンルや、先生の指定も合わせて考えます。
「三日で切れた」だけより、「三日前に張り、練習で使ったのは合計二時間ほど。初めて合わせる高さへ調弦中に切れた」と記録した方が、使用条件が伝わります。正確な時間が分からなければ、およその練習回数で構いません。この例の日数や時間は、交換の基準ではありません。
また、糸は切れる前に変わることもあります。菊岡中むらは、一の糸の接触部が減り、さわりが付きにくくなる例を説明しています。切れない限り使ってよいと決めず、目立つほつれや音の変化にも気づいたら、その時点を残しましょう。
一度の交換で済むか繰り返すかを見る
見える破損がなく、指定された糸と交換方法が確認済みなら、消耗した糸は習った手順で交換します。交換日と使った品物を残し、課題の目標音へ調弦します。新しい糸へ替えるたびに、素材、番号、駒、目標音をまとめて変えると、前との比較が難しくなります。
適合品へ替えても短い間に同じ場所で切れる場合や、新しく張るたびに切れる場合は、交換を繰り返すのをやめて点検を頼みます。駒や上駒の欠け、音緒の傷みが見える場合も、次の糸を張って試す前に相談します。
逆に、前回と位置も状況も違えば、同じ原因とは限りません。一件ずつ分けて残しましょう。張り方を先生に見てもらう、道具を修理店で確認してもらう、購入した糸を販売店に照合するというように、記録に応じて確認の対象を選びます。
予備の糸と記録をまとめて用意する
予備を買うときは、確認済みの品名と一・二・三の区分を使います。袋の表示と購入日を残し、保管していた場所も説明できるようにしておきましょう。絹糸のメーカーは、湿気、乾燥しすぎ、直射日光に注意するよう案内しています。
保管条件が悪かったかもしれなくても、それだけで今回の切断原因とは決めません。古い予備から出した糸か、新しく買った糸かも、ほかの条件と並べる情報です。濡らしたり油を塗ったりして強さを戻す処置はしないようにします。
相談のためにそろえたいのは、糸の袋、切れた場所の写真、張った日と切れた場面、楽器と道具の情報です。同じ場所で続いたかが分かれば、「また切れました」より具体的な話ができます。糸を補充するだけで済むか、接触部まで点検するかを、現物と記録から確認しましょう。
参考資料
切断位置ごとの点検先は亀屋邦楽器のFAQ、消耗と使用条件は三萃園の糸のメンテナンスを参照しました。安全上の注意はスズキのききょう取扱説明書で確認できます。
商品の表示と保存は丸三ハシモトのFAQと商品紹介、切断前の摩耗の例は菊岡中むらの糸の劣化具合を参照しました。